「複数の保険に入っているが、何がどう重なっているかよくわからない」——そういう状態の人は多い。重複加入は保険料の無駄遣いになりますが、整理せずに放置されがちです。よくある重複パターンと確認方法を整理します。
重複加入が起きやすい3つの原因
なぜ重複が起きるかを理解すると、確認のポイントが見えやすくなります。
① ライフイベントごとに「追加」してきた 結婚・出産・住宅購入のタイミングで新しい保険を勧められ、古い保険を解約しないまま追加し続けた結果、重複が生じます。
② 公的保障の内容を把握していない 高額療養費制度や傷病手当金などの公的保障がカバーする範囲を把握していないと、民間保険と重複してカバーしても気づきません。
③ 職場の保険と個人の保険が重なっている 会社の団体保険・福利厚生の保障と、自分で加入している個人保険が重複しているケースも多い。
パターン①:住宅ローンの団信と死亡保険の重複
仕組み: 住宅ローンを組む際に加入する団体信用生命保険(団信)は、ローン契約者が死亡(または高度障害状態になった場合)、残りのローンが全額完済されます。
重複の状態: 団信に加入しているにもかかわらず、住宅購入前に設定した手厚い死亡保険をそのまま継続している。
整理の考え方: 団信が適用されると、遺族は住宅ローンという大きな負担がなくなります。残す死亡保障の必要額を「団信でカバーされるローン残高を除いた遺族の生活費・教育費の不足分」で再計算しましょう(→ 住宅ローンを組んだら保険はどう変わるか)。
多くの場合、住宅購入後は死亡保障を大幅に減額できます。
パターン②:健康保険の高額療養費制度と医療保険の重複
仕組み: 公的健康保険の高額療養費制度により、月の医療費自己負担には所得に応じた上限が設けられています。年収目安370〜770万円の場合、上限は月約8〜9万円。
重複の状態: 高額療養費制度が使える状況にもかかわらず、民間の医療保険で「入院1日あたり○千円」「手術○万円」の給付を手厚くカバーしている。
整理の考え方: 貯蓄が200〜300万円あれば、高額療養費制度を使った後の自己負担はほぼ自己資金でまかなえます。医療保険が必要になる状況は「貯蓄が少ない」「先進医療を希望する可能性が高い」などの特定の条件下です(→ 医療保険は本当に必要か?)。
高額療養費の自己負担上限の目安
年収〜370万円:月上限約5.7万円、年収370〜770万円:月約8.7万円、年収770〜1,160万円:月約17.7万円。いずれも3回超で「多数回該当」の上限が適用されます。
パターン③:傷病手当金と就業不能保険・所得補償保険の重複
仕組み: 会社員(健康保険加入者)が病気・ケガで働けなくなった場合、最大1年6カ月間、標準報酬月額の2/3が傷病手当金として支給されます。
重複の状態: 傷病手当金が受け取れる状況にもかかわらず、就業不能保険や所得補償保険にも加入している。
整理の考え方: 傷病手当金の受給期間(最大18カ月)は、就業不能保険と役割が重なります。就業不能保険に加入する場合は、傷病手当金の給付期間が終わった後(18カ月超)をカバーする設計が合理的です。免責期間を長く設定するほど保険料は下がります(→ 就業不能保険の選び方:免責期間と保障額の決め方)。
フリーランス・個人事業主など傷病手当金を受け取れない立場では、この重複は発生しません。
パターン④:遺族年金と生命保険(死亡保障)の重複
仕組み: 国民年金・厚生年金の加入者が死亡した場合、要件を満たす遺族(配偶者・子ども)に遺族年金が支給されます。
重複の状態: 遺族年金で遺族の生活費の大部分がカバーされているにもかかわらず、生命保険の死亡保障を過剰に設定している。
整理の考え方: 遺族年金は実際いくらもらえるか?で整理しているように、会社員・共稼ぎ世帯では遺族年金の受取額が思ったより多いケースがあります。遺族年金の概算を把握してから、必要な死亡保障の上乗せ分を計算しましょう。
パターン⑤:会社の団体保険と個人の保険の重複
仕組み: 多くの企業では、従業員向けに団体生命保険・団体医療保険・慶弔見舞金制度などを福利厚生として用意しています。
重複の状態: 会社の団体保険(死亡保障・医療保障)が実は充実しているのに把握せず、個人でも同種の保険に加入している。
整理の考え方: 会社の就業規則・福利厚生の案内、または人事部門に「団体保険の内容」を確認しましょう。団体保険は保険料が割安なケースがある一方、退職すると継続できない点に注意が必要です。
パターン⑥:複数の医療保険・生命保険の重複
仕組み: 「以前に加入した保険に加えて、新しい保険も追加で加入する」を繰り返した結果、医療保険が2本・生命保険が2本以上ある状態。
重複の状態: 同一のリスクを複数の民間保険でカバーしている。医療費の補填が実際の費用を上回る「過払い」状態になっている。
整理の考え方: 保険証券を全部並べて、「どのリスクに対して何の保険で何円カバーしているか」を一覧化します。同じリスクに重複して備えているものは整理の対象です。
自分でできる重複チェックの手順
ステップ①:保険証券を全部出す 加入中のすべての保険(生命保険・医療保険・就業不能保険・火災保険など)の証券を集めます。一覧がない場合は保険会社に「契約内容確認書」を請求できます。
ステップ②:保障の種類別に整理する リスクの種類(死亡・入院・就業不能・火災など)ごとに、どの保険でいくらカバーしているかを書き出します。
ステップ③:公的保障でカバーされる金額を把握する 高額療養費制度・傷病手当金・遺族年金・団信など、公的保障+ローン付随保険でカバーされる部分を差し引きます。
ステップ④:重複しているものを特定する 同じリスクに対して民間保険が複数重なっている場合、どちらを残すか判断します。
「どちらを解約するか」の判断基準
重複している場合、一般的には「割高な保険」「保障の重複度が高い保険」「特約が過剰な保険」の順に整理の候補になります。保険を解約してもいいか迷ったら確認する5つの問いで解約前のチェックリストを確認しましょう。
まとめ:重複を放置すると毎月損し続ける
重複加入は気づかなければ何年も放置されます。保険料は毎月引き落とされる固定費なので、重複している月数分だけ無駄な支出が積み上がります。
年に1回、保険証券を見直す習慣をつけることで、重複に早く気づけます(→ 保険料が高いと感じたら試す3つの見直し手順)。
まとめ
重複加入の主なパターンは「団信×死亡保険」「高額療養費×医療保険」「傷病手当金×就業不能保険」「遺族年金×死亡保険」「会社の団体保険×個人保険」「複数の医療保険・生命保険」の6つです。保険証券を全部出して、リスクの種類別に整理し、公的保障でカバーされる範囲を差し引いてから判断しましょう。
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今の状況を入力して、重複しているかもしれない保険を整理するヒントを得られます。