「就業不能になったときのために医療保険や就業不能保険が必要」という話をよく聞きます。しかし会社員には、まず傷病手当金というセーフティネットがあります。この制度の内容を把握していないまま保険に入ると、不要な保険料を払い続けることになります。
傷病手当金とは何か
病気やケガで仕事を休み、会社から十分な報酬が受けられない場合に、健康保険から給付される手当金です。会社員・公務員が加入する健康保険(協会けんぽ・健保組合)の被保険者が対象です。
国民健康保険(自営業・フリーランス)は対象外です。
支給額はいくらか
標準報酬日額 × 2/3が1日あたりの支給額です。
標準報酬日額は「標準報酬月額 ÷ 30」で計算されます。標準報酬月額は、おおよそ月給(残業代・通勤手当を含む月収)に基づいて決まります。
計算例:月収30万円の場合
標準報酬月額:300,000円 標準報酬日額:300,000円 ÷ 30 = 10,000円 傷病手当金の日額:10,000円 × 2/3 ≒ 6,667円 月換算(30日):約200,000円
月収の約2/3が支給されるイメージです。
支給される期間
支給が開始された日から通算で**最長1年6ヶ月(18ヶ月)**です。
ただし、支給は連続して3日間休んだ後の4日目から始まります(待期期間3日間)。最初の3日間は会社の有給休暇などを使う必要があります。
また、2022年の改正により「途中で復職し、再び休んだ場合」でも通算して18ヶ月まで支給されるようになっています。
傷病手当金が支給されない・減額されるケース
- –国民健康保険(自営業・フリーランス)の加入者
- –退職後に継続給付の条件を満たさない場合
- –同期間に障害厚生年金・障害基礎年金が支給されている場合(差額のみ)
- –会社から傷病手当金より多い報酬が支払われている場合
退職後も傷病手当金を受け取り続けるには、退職日時点で傷病手当金を受給中(または受給できる状態)であること、かつ退職日に出勤していないことが条件です。
申請の流れ
- 01会社(健康保険の担当部署)に「傷病手当金支給申請書」を入手する
- 02医師に「療養担当者意見欄」を記載してもらう
- 03事業主(会社)に「事業主記入欄」を記載してもらう
- 04健康保険組合または協会けんぽに提出する
申請は1ヶ月ごとに行うのが一般的です。支給まで申請後1〜2ヶ月かかる場合があるため、その間の生活費の手当も考えておく必要があります。
傷病手当金を踏まえた就業不能保険の考え方
傷病手当金があることで、会社員は最大18ヶ月間、収入の約2/3を受け取れます。就業不能保険を追加で検討するのは、以下の場合です。
- –18ヶ月を超える長期就業不能リスクへの備え:がん・精神疾患・脳卒中など、回復に長期間かかるケース
- –収入の1/3の減少を補いたい場合:住宅ローン返済中で、月収の2/3では返済が厳しい
- –待期期間中の3日間を超えた短期カバー:有給休暇がない、または使いたくない場合
逆に言えば、貯蓄が十分にあり、月収の2/3で生活できる場合は、就業不能保険の優先度は下がります。
まとめ
傷病手当金は、会社員が病気・ケガで働けなくなったときの最初のセーフティネットです。月収の約2/3が最大18ヶ月支給されます。就業不能保険を検討する前に、傷病手当金でどこまでカバーできるかを把握しておくことが、保険の過不足を判断する出発点になります。
関連記事
就業不能保険が必要かどうかは、働き方と貯蓄状況によって変わります。診断ツールで整理できます。