「死亡保障はいくら必要ですか?」と聞かれて、根拠を持って答えられる人は多くありません。「なんとなく3,000万円」は多すぎることも少なすぎることもあります。必要保障額の計算方法をシンプルに整理します。
必要保障額とは何か
必要保障額とは「自分が死亡した場合に、残された家族が生活を維持するために不足する金額の総額」です。
シンプルな計算式:
必要保障額 = 遺族の生活費の合計
ー 遺族が自力で確保できる金額(遺族年金+配偶者収入+貯蓄)
この差額がゼロ以下なら、死亡保障は不要です。差額がプラスの場合、その金額が必要保障額の目安になります。
ステップ① 遺族が必要とする金額を試算する
まず「自分が亡くなった後、遺族に必要なお金の総額」を概算します。
主な費用の項目:
| 項目 | 目安 | |---|---| | 子どもの生活費(末子が独立するまで) | 月15〜20万円 × 残り年数 | | 配偶者の老後生活費(65歳〜) | 月10〜15万円 × 余命年数 | | 子どもの教育費 | 高校まで公立→私立で計500〜1,000万円 | | 住宅費(賃貸の場合) | 月7〜10万円 × 残り年数 | | 葬儀・手続き費用 | 150〜200万円(一時費用) |
住宅ローンがある場合は団体信用生命保険(団信)が適用されるため、ローン残高は差し引けます(→ 住宅ローンを組んだら保険はどう変わるか)。
ステップ② 遺族が自力で確保できる金額を確認する
次に「遺族が自分で確保できるお金」を引き算します。
遺族年金の確認
会社員が亡くなった場合、配偶者・子どもに「遺族厚生年金+遺族基礎年金」が支給されます。
遺族年金の目安(会社員・標準的なケース):
| 家族構成 | 遺族年金の目安(年額) | |---|---| | 配偶者+子ども1人(18歳未満) | 約120〜180万円/年 | | 配偶者+子ども2人(18歳未満) | 約140〜200万円/年 | | 配偶者のみ(子どもなし) | 約60〜100万円/年(遺族基礎年金はなし) |
※厚生年金の加入期間・標準報酬月額によって大きく異なります。ねんきん定期便で概算を確認することを推奨します(→ 遺族年金は実際いくらもらえるか?自分のケースで概算する方法)。
配偶者の収入
配偶者が働いている場合、その収入は「遺族が自力で確保できる金額」に含まれます。
共稼ぎ世帯の場合: 配偶者の収入が月25万円あり、子どもの養育費・教育費をまかなえる場合、死亡保障の必要額は大幅に低下します。「配偶者が専業主婦(夫)かどうか」が必要保障額に最も大きく影響する要素の一つです。
現在の貯蓄
流動性のある貯蓄(現金・預金・株式など)は遺族が活用できます。緊急予備資金として残す分(生活費の3〜6ヶ月分程度)を除いた金額を計上します。
ケース別の必要保障額の目安
ケース①:共稼ぎ・子ども1人(3歳)・住宅ローンあり(団信加入)
| 項目 | 金額 | |---|---| | 子どもの養育費・教育費 | 約2,000万円 | | 配偶者の老後資金(一部補填) | 約500万円 | | 合計必要額 | 約2,500万円 | | 遺族年金(15年間) | ▲約2,400万円(年160万円×15年) | | 配偶者収入(月25万円) | ▲十分にまかなえる水準 | | 貯蓄(500万円) | ▲500万円 | | 必要保障額 | ほぼゼロ〜500万円程度 |
→ このケースでは「3,000万円の死亡保障」は大幅に過剰になる可能性があります。
ケース②:専業主婦(夫)・子ども2人(5歳・2歳)・住宅ローンなし
| 項目 | 金額 | |---|---| | 子ども2人の養育費・教育費 | 約4,000万円 | | 配偶者の生活費(20年間) | 約3,000万円(月12万円×20年) | | 合計必要額 | 約7,000万円 | | 遺族年金(20年間) | ▲約3,600万円(年180万円×20年) | | 貯蓄(300万円) | ▲300万円 | | 必要保障額 | 約3,100万円 |
→ このケースでは死亡保障3,000万円程度が必要な水準になります。
ケース③:独身・配偶者なし・扶養家族なし
| 項目 | 金額 | |---|---| | 葬儀・手続き費用 | 約200万円 | | 貯蓄(200万円以上) | ▲200万円以上 | | 必要保障額 | ほぼゼロ |
→ 独身で扶養家族がいない場合、死亡保障はほぼ不要です(→ 独身に保険は必要か?状況別に整理する)。
必要保障額が変わるタイミング
必要保障額は固定ではなく、ライフステージによって変動します。
必要保障額が下がるタイミング:
- –子どもが独立・就職した(養育費の補填が不要になる)
- –住宅ローンを完済した(団信が終わるが、ローン残債の補填も不要になる)
- –貯蓄が増えた(自己資金でカバーできるリスクが増える)
- –配偶者が働き始めた・収入が増えた
必要保障額が上がるタイミング:
- –子どもが生まれた(→ 子どもが生まれたら保険を見直すべきか)
- –住宅ローンを組んだ(団信の補償内容による)
- –配偶者が専業主婦(夫)になった
必要保障額が大きく変わるライフイベントのたびに、保障内容を見直すことが重要です。
保険の種類と必要保障額の対応
必要保障額が計算できたら、どの保険で備えるかを選びます。
| 保険の種類 | 向いているケース | |---|---| | 定期保険 | 子どもが独立するまでの期間、大きな保障が必要なケース | | 収入保障保険 | 残り期間が長いほど保障が手厚い逓減型。子育て世代に合いやすい | | 終身保険 | 老後の相続対策・葬儀費用の確保が目的の場合 |
子育て世代で保険料コストを抑えたい場合、定期保険または収入保障保険が費用対効果の高い選択になることが多いです(→ 定期保険と収入保障保険、子育て中ならどちらを選ぶべきか)。
「多すぎる保障」を見直す判断軸
実際には「保障が多すぎる」状態になっているケースの方が多い傾向があります。
多すぎる可能性が高いサイン:
- –子どもがすでに独立しているのに高額の死亡保障が続いている
- –共稼ぎで配偶者収入が十分にあるのに、専業主婦前提の保障額のまま
- –団信に加入した住宅ローンがあるのに、保障額をローン残債の分だけ減らしていない
- –貯蓄が大幅に増えたのに、若いころに設定した保障額のまま
これらに当てはまる場合は、減額・解約で保険料を削減できる可能性があります(→ 保険料が高いと感じたら試す3つの見直し手順:削っても安心な保障の残し方)。
まとめ
必要保障額は「遺族の必要額 ー 遺族年金・配偶者収入・貯蓄」で計算します。共稼ぎ・団信加入の場合は必要保障額が大幅に低くなるケースが多く、「何となく3,000万円」が過剰になっていることもあります。ライフイベントのたびに計算し直し、保障が過不足なく合っているかを確認することが重要です。
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家族構成・収入・貯蓄を入力して、今の死亡保障が適正な水準かどうかを確認できます。