「子どものために学資保険に入るべきか」——子どもが生まれた直後に多くの人が直面する判断です。しかし「返戻率105%」という数字だけで決めると、後から後悔するケースがあります。
学資保険の仕組みと「返戻率」の正しい読み方
学資保険は、毎月一定の保険料を積み立て、子どもの学費の時期に合わせて満期保険金や祝い金を受け取る商品です。
販売時に強調される「返戻率105%」とは、「支払った保険料の合計額に対して、受け取れる金額の割合」です。
返戻率の計算例:
月払保険料:15,000円 × 12ヶ月 × 17年 = 支払総額 306万円
満期保険金:321万3,000円
返戻率:321.3 ÷ 306 × 100 ≒ 105%
一見「5%お得」に見えますが、これは17年間かけた場合の総額での比率です。
実質年利に換算すると:
返戻率105%・17年間の場合、実質年利は約0.3%前後になります。インフレ率が年1〜2%であれば、実質的には「目減り」している計算になります。
学資保険 vs NISA:何が違うのか
学資保険とNISAの最大の違いは「リターンの期待値」と「資金の自由度」です。
| 比較項目 | 学資保険 | NISA(インデックスファンド) | |---|---|---| | 実質年利の目安 | 0.1〜0.5%程度 | 年平均5〜7%(長期・過去実績) | | 元本保証 | あり(払込完了後) | なし | | 資金の自由度 | 低い(途中解約で元本割れ) | 高い(いつでも売却可) | | 税制優遇 | なし(一時所得として課税の場合あり) | 運用益が非課税 | | 死亡保障 | 保険料払込免除特則あり | なし | | インフレへの対応 | 弱い(固定利率) | 強い(株式・資産価格は長期的にインフレに追随しやすい) |
長期で見た場合のリターン期待値は、NISAのインデックスファンドが学資保険を大きく上回る可能性があります(→ NISAと学資保険どちらを先にすべきか:実質利回りで比較した正直な結論)。
学資保険が「向いている人」の条件
学資保険がすべての人に不向きというわけではありません。以下の条件に当てはまる場合は選択肢になりえます。
① 「絶対に元本割れさせたくない」人
NISAは元本保証がありません。「子どもの学費だけは絶対に確保したい、多少低くても確実性を優先する」という方針の場合、元本保証のある学資保険にはそれなりの価値があります。
② 「強制貯蓄の仕組み」が必要な人
学資保険は「途中解約で損をする」という構造上、自動的に貯蓄を続けやすい仕組みです。「自分で積み立てると使ってしまう」という自覚がある場合、強制貯蓄装置としての価値があります。
③ 親が死亡・高度障害になるリスクへの備えが目的の場合
多くの学資保険には「保険料払込免除特則」があります。契約者(通常は親)が死亡または高度障害になった場合、その後の保険料支払いが免除され、満期保険金は予定通り受け取れます。
これは純粋な貯蓄(NISA・預金)にはない機能です。「子どもの学費を守る保障」として捉えると意味があります。
学資保険を「今すぐやめていい人」の条件
逆に、以下に当てはまる場合は学資保険の優先度は低くなります。
やめていい条件:
- –NISAの年間投資枠(年360万円)をまだ使い切っていない
- –手元の貯蓄が子どもの学費見込み額(目安:大学進学で400〜600万円)を超えている
- –長期投資に慣れており、元本割れリスクを許容できる
- –途中解約の可能性が低く、17〜18年間の積立を続けられる見込みがある
特に「NISAをまだ使っていない」人が学資保険を優先する合理的な理由は少ないです(→ 保険より貯蓄を先にすべき人の条件:入る前に確認する4つのチェック)。
すでに加入している場合:解約すべきか?
学資保険にすでに加入している場合、解約の判断は単純ではありません。
確認すべき2点:
① 現在の解約返戻率を確認する
学資保険は契約初期に解約すると返戻率が著しく低くなります(50〜80%台になることも)。加入から5年以上経過し返戻率が90%以上になっているなら、解約の判断が現実的になってきます。
② 「払済保険」への変更を検討する
解約する代わりに「払済保険」に変更する方法があります。これ以上の保険料支払いをやめ、これまでの積立分だけで保障・積立を継続する仕組みです。受け取り額は減りますが、これ以上の保険料を払わずに済みます。
保険会社に問い合わせて「払済にした場合の受取額」を確認してから判断することを推奨します(→ 保険を解約してもいいか迷ったら確認する5つの問い)。
教育費の目安と必要な積立額
学資保険か否かにかかわらず、教育費の現実的な目安を把握しておくことが出発点になります。
教育費の目安(子ども1人・18歳〜22歳の大学費用):
| 進路 | 4年間の費用目安 | |---|---| | 国公立大学(自宅通学) | 約250万円 | | 国公立大学(一人暮らし) | 約500万円 | | 私立文系(自宅通学) | 約400万円 | | 私立理系(自宅通学) | 約550万円 | | 私立(一人暮らし) | 約700〜800万円 |
大学費用に加え、高校・中学・小学校の私立進学を想定する場合はさらに大きな金額になります。
月々いくら積み立てれば足りるか(子どもが0歳の場合の目安):
| 目標額 | 積立期間18年間の月額 | |---|---| | 300万円 | 約1.4万円/月 | | 500万円 | 約2.3万円/月 | | 700万円 | 約3.2万円/月 |
これを学資保険で積み立てるか、NISAで運用するかの違いは「利回りの差」です。NISAで年平均5%運用できた場合、同じ目標額を達成するための月々の積立額は学資保険より少なくなります。
まとめ
学資保険の返戻率105%は実質年利0.3%程度。NISAの長期期待リターンを大きく下回ります。「元本割れ回避」「強制貯蓄」「払込免除特則」という3点に価値を見出せる場合は選択肢になりますが、NISAの枠をまだ使っていない場合は先にNISAを検討することが合理的です。すでに加入している場合は解約よりも「払済変更」が有効な選択肢になることがあります。
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