「解約返戻金がある」「払った保険料が戻ってくる」という説明で終身保険を勧められたことはないでしょうか。返戻率が100%を超えることは事実ですが、「お得かどうか」は別の話です。数字で正直に整理します。
終身保険の「貯蓄性」とは何か
終身保険は死亡時に保険金が支払われる保険ですが、多くの商品では一定期間後に解約すると「解約返戻金」が戻ってきます。払込期間が終わった後に解約すると返戻率が100%を超えるケースがあり、これを「貯蓄性がある」と説明されます。
ただし、この返戻率を実質的な年利回りに換算すると、話は変わります。
返戻率を年利回りに換算する
具体例で計算してみましょう。
例:月払い2万円、30年間払込、解約返戻金800万円の終身保険
- –払込総額:2万円 × 12ヶ月 × 30年 = 720万円
- –解約返戻金:800万円
- –返戻率:800 ÷ 720 = 111%
「111%戻ってくる」と聞くとお得に見えます。しかし実質利回りを計算すると:
30年間で720万円が800万円になる年利 ≒ 約0.35%
定期預金と同程度か、それ以下の利回りです。インフレが年0.5〜1%程度あるとすると、実質的には元本割れに近い状態になる可能性があります。
払込期間中の解約は大幅な元本割れ
終身保険は初期の解約返戻金が低く設定されています。払込期間中(たとえば30年払いの10〜15年目)に解約すると、払い込んだ保険料を大きく下回る解約返戻金になることがほとんどです。「必要になったら解約すればいい」という考えは危険です。
NISAと比較したとき
同じ月2万円を30年間、年利4%のインデックスファンドで積み立てた場合:
- –積立総額:720万円
- –運用後の想定残高:約1,388万円(年利4%複利計算)
終身保険の800万円と比べると、約590万円の差です。
もちろんNISAは元本保証ではなく、相場環境によって結果は変わります。しかし長期積立の観点では、終身保険の「貯蓄性」は投資と比較したときに見劣りすることが多いのは事実です。
終身保険が合理的な選択肢になる条件
ただし、終身保険が「意味を持たない」わけではありません。以下の条件に当てはまる場合は検討する価値があります。
① 相続対策として活用する場合 死亡保険金は「500万円 × 法定相続人の数」が非課税枠として認められています。資産規模が大きく、相続税対策が必要な場合に有効な手段になります。
② 確実に一定額を残したい場合 投資のリスクを取りたくない、あるいは「いくら残るか確定した金額で管理したい」という場合、変動しない解約返戻金の確実性に価値があります。
③ 強制貯蓄の仕組みが必要な場合 自分で積み立てる自信がない、使ってしまいそうという場合、払込義務がある終身保険は強制的な積立手段になります。
「保障と貯蓄を分ける」発想
終身保険の本質的な問題は「保障と貯蓄が一体化している」点にあります。これを分けて考えると:
- –保障(死亡リスクへの備え):必要な期間だけ、掛け捨ての定期保険で安く確保する
- –貯蓄(資産形成):NISAや積立投資で効率よく行う
この分離によって、保険料を抑えながら資産形成の効率を上げられます。子育て期の死亡保障については30代の保険の考え方でも整理しています。
既に終身保険に入っている場合
すでに終身保険に加入している場合は、以下の観点で継続・解約を判断しましょう。
- 01現在の解約返戻率を確認する:払込総額に対して今いくら戻るか
- 02払込完了まで何年か確認する:あと数年で払込完了なら継続が合理的なケースが多い
- 03今後の払込総額と返戻金の差を計算する:継続することでいくら増えるか
- 04解約した資金をどう運用するか考える:解約返戻金をNISAに回した場合の試算をする
まとめ
終身保険の返戻率が100%を超えても、実質年利に換算すると0〜1%台にとどまることが多い。NISAなどと比較した場合の機会損失は大きくなりえます。「相続対策」「確実性」「強制貯蓄」という明確な目的がなければ、「保障は定期保険、貯蓄はNISA」に分ける方が効率的なケースがほとんどです。
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